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  • 交通事故時の慰謝料。2つの計算基準について
  • 交通事故時の慰謝料。2つの計算基準について
    ほっかい法律事務所
    堀江 健太

    交通事故で怪我をして、病院に入院・通院をした場合には、これに応じた慰謝料が発生します。
    この場合の慰謝料額の計算基準には、大きく2つの基準があります。

    今回は、この2つの慰謝料の計算基準についてのお話です。

    また、後遺障害が残ったことによる慰謝料額とは別に計算されますので、こちらについてもご紹介いたします。

    交通事故時の入通院慰謝料額。2つの計算基準の違い

    交通事故の入通院慰謝料額の計算基準には次の2つの基準があります。


    ①保険会社が各社独自に決めている基準(自賠責保険の慰謝料額の計算基準に合わせたものが多い)
    ②交通事故賠償訴訟の裁判例の傾向から導かれる基準

     

    ①の基準は、実治療日数(病院に入院・通院したの日数)の多さから計算する基準で、②の基準は、治療期間(病院に入院・通院した期間)の長さから計算する基準です。

    治療期間がごく短期間で終わるケースを除いては、②の基準で計算をした方が慰謝料額は高額になるのが一般的です。

    ②の基準としては、日弁連交通事故相談センター東京支部発行の「民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準」(いわゆる「赤い本」)に掲載された基準を使うことが実務的には多いのではないかと思います。

    平成27年版までの「赤い本」基準の内容

    この「赤い本」は、毎年度発行されている書籍で、毎年内容の改定が行われています。平成28年版では、この慰謝料の算定基準に関する記載が改定されました。

    平成27年版までの基準では、特にむち打ち症で画像検査や神経学的検査で異常の無いケースにおける治療期間の認定に際しては、「慰謝料算定のための通院期間は、その期間を限度として、実治療日数の3倍程度を目安とする」という記載になっていました。

    例えば、治療期間が6ヶ月間あったとしても、実通院日数が30日(通院30回)であれば、その3倍にあたる90日間(3ヶ月間)を基準とする慰謝料しか認められないという基準だったのです。

    この場合に、通院期間を6ヶ月間とする本来の慰謝料が認められるためには、6ヶ月間に60回の通院が必要となり、3日に1回の通院が必要となります。

    しかし、通院の頻度は、その方の生活スタイルによって、大きな影響を受ける部分であり、仕事が多忙な方であれば、週に1回の通院時間を確保するのも苦労されるはずです。

    実治療日数が少ないからといって、症状が軽いとは限らないわけですから、平成27年版までの基準は、やや現実に合わない基準になっていたともいえます。

    平成28年版「赤い本」基準における変更内容

    現に交通事故賠償訴訟の中では、実通院期間が少なかったとしても、実際の治療期間を基準に慰謝料を算定している裁判例が多く、平成28年版ではこの点が改定になりました。

    具体的には、実際の通院期間を基礎とすることが明記され、通院が長期にわたる場合に限り、症状、治療内容、通院頻度をふまえ実通院日数の3倍程度を通院期間の目安とすることもあるというように、原則として実際の通院期間を基準とすることとされました。

    基準変更後の示談交渉実務への影響

    このような基準の変更後も、保険会社からは通院期間に比べて実通院日数が少ないケースの慰謝料額について、平成27年版までの基準を引き合いに出して、慰謝料の減額を主張してくることがあります。

    しかし、新基準の説明を丁寧にすることで、こちらの考える慰謝料額を認めるという保険会社の担当者も増えてきていると感じます。

    交通事故による後遺障害に対する慰謝料について

    交通事故により後遺障害が残った場合、次の2つの賠償が行われます。

     

    (1)逸失利益に対する賠償
    (2)精神的被害に対する賠償(慰謝料)

     

    このうち(2)の精神的被害に対する賠償(慰謝料)ですが、保険会社が示談の際に提示してくる額と裁判をした場合に認められる額に大きな差があります。

    後遺障害については、1~14までの等級があり、基本的にはこの等級により金額を算定するのですが、たとえば14級に相当する後遺障害の場合、保険会社が示談の際に提示してくる額は、私の経験上、40~70万円というのがほとんどです。

    これに対し、裁判をした場合には、100万円を下回ったことは私の経験上ありませんし、裁判を起こさずとも、保険会社との交渉において、裁判をした場合に一般的に認められる金額(裁判基準)で請求すればだいたいの場合において、その金額を認めてきます。

    保険会社としては、裁判を起こされれば、自社の主張する金額はまず認められないことは分かっており、裁判になることで、弁護士費用や交通事故日以降の遅延損害金を請求されるよりは、大人しく裁判基準の金額を支払った方が得だという判断なのだろうと思います。

    裁判を起こしたり、弁護士に交渉を依頼したりした場合には適正な金額を支払ってくるとはいえ、保険会社から提示された金額について、妥当な金額なのだろうと信じてそのまま示談をしてしまうケースは数多くあるはずです。

    業界団体である日本損害保険協会の定める損害保険の保険金支払に関するガイドラインでは、「損害保険会社としての基本的かつ最も重要な機能である保険金の適時・適切な支払」とありますが、その言葉に恥じぬよう裁判を起こされたり、弁護士が交渉に入る前に「適切な保険金の支払い」をしてほしいものです。

    このように、この後遺障害の精神的被害に対する賠償(慰謝料)は、保険会社が示談の際に提示してくる額と裁判をした場合や弁護士に交渉を依頼した場合に認められる額には大きな差がありますので、後遺障害が残った場合には、保険会社と示談をする前にぜひ一度当事務所までご相談下さい。

    交通事故時の慰謝料についてのご相談は当法律事務所までご相談下さい

    ほっかい法律事務所では、常に最新の計算基準による適切な金額の示談金の獲得を目指して、保険会社と示談交渉を行っています。
    後遺障害が残った場合の慰謝料についても、保険会社と示談をする前にぜひご相談いただければと思います。

    交通事故賠償の問題に関しては、当事務所の交通事故無料相談をご利用下さい。