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  • 交通事故の物損で役立つ知識 〜評価損と台車料〜
  • 交通事故の物損で役立つ知識 〜評価損と台車料〜
    ほっかい法律事務所
    横山 尚幸
    ※横山尚幸弁護士は令和3年6月30日をもって当事務所を退所いたしました。本記事は当事務所在籍中に執筆したものです。

    交通事故により車両が損傷を受けた場合、修理をして中古車取引市場での価格が低下したといった経験はありませんか?

    また、交通事故により車両が損傷を受け、修理や買替えまでの間、代車を利用したことはありませんか?

     

    今回は、交通事故に遭った際の物損に関するもので知っておくと役に立つ「評価損」と「代車料」についてお話します。

     

    交通事故による物損(1) 評価損について

    交通事故により車両が損傷を受けた場合、修理をしても、機能や外観に欠陥が残存したり、事故歴があること自体によって中古車取引市場での価格が低下することがあります。

    このように事故前の車両価格と修理後の車両価格に生じた差額を「評価損」と呼んでいます。

    新車で事故にあった場合、ローンで購入した憧れの車両が事故にあった場合等に、相手方に請求したいという思いが強くなりやすい損害になります。

     

    一方、保険会社は、評価損の支払いをなかなか認めないところ、評価損を請求したいという理由で、ご相談に来られる方も多いです。

     

    評価損を相手方に請求できるか?

    では、評価損は、法律上相手方に請求できる損害なのでしょうか。

     

    修理をしても完全な原状回復ができず、機能や外観に何らかの欠陥が残存している場合(技術上の評価損が発生した場合)には、相手方に請求できると認められることが多いです。

    これに対して、修理によって原状回復され欠陥が残存していない場合に、隠れた欠陥があるかもしれない、縁起が悪いなどの評価を受けることにより、中古車価格が低下した場合(取引上の評価損が発生した場合)には、相手方に請求できるか問題となることが多いです。

     

    この点、取引上の評価損は、懸念にすぎず、売却時に初めて実現化するものであり、事故後も車両を売却せずに使い続けている限り、損害は発生していないとし、取引上の評価損発生を否定する見解もあります。

     

    しかし、不法行為により滅失・毀損したことを理由とする損害賠償額は、特段の事情のない限り、滅失・毀損当時の交換価格を基準とすべきところ、評価損も、事故時に発生すると理解すべきといえます。

    また、中古車市場において事故歴や修理歴のある車両の価格が低下することは公知の事実といえます。

     

    それゆえ、事故車両を売却して価格の低下が具体化・現実化していることまでは要しないとして、取引上の評価損についても請求できる場合があるといえます。

     

    評価損に関する基準

    もっとも、どのような場合に評価損が肯定されるか明確な基準はなく、次のような事柄を総合的に考慮して評価損が請求できるか否かを検討すべきとされています。

     

    ①初度登録からの期間

    ②走行距離

    ③損傷の部位

    ④事故車両の人気

    ⑤購入時の価格

    ⑥中古車市場での通常価格等

     

    また、評価損の算定方法も明確な基準はないため、次のような点を考慮して評価損を算定した事例等があるとされています。

     

    ①修理費を基準にして評価損を認めた事例

    ②車の時価を基準にして評価損を認めた事例

    ③財団法人日本自動車査定協会等の査定等

     

    交通事故による物損(2)代車料について

    続いて、交通事故により車両が損傷を受け、修理や買替えまでの間、代車を利用した場合に発生する代車料について見ていきましょう。

     

    交通事故で代車料が認められるには?

    代車を利用するために要した費用を代車料と呼んでいますが、相手方に対し代車料を請求できるのは、どのような場合でしょうか。

     

    代車料を相手方に請求するためには,少なくとも次の2つを満たす必要があります。

    ①代車を使用したこと

    ②代車を使用する必要性があったこと

     

    実際に代車を使用したことが必要になる(①の要件)ので、事故により車両の修理・買換えが必要になれば、当然に代車料が認められるわけではないということです。

     

    代車の必要性(②の要件)は、事故にあった車両が自家用車の場合に問題となりやすい要件です(営業車両が事故に遭った場合、代車の必要性は肯定されやすいです)。

    自家用車の場合、一般的には、事故車両が通勤・通学の用に供されていたときには代車の必要性が肯定されやすいですが、例えば、利用可能でかつ利用が相当といえる代替交通機関が存在する場合や代替利用できる車両を複数台所有していた場合には、代車の必要性(②の要件)が否定される傾向にあるとされています。

     

    代車として高級外車を利用した場合は?

    では、上記①②の要件を満たす場合、代車として高級外車を利用した場合であっても、代車料として全額支払われるでしょうか?

     

    代車は、事故車両の修理期間など比較的短期間の代替手段であり、いわば応急の対応です。

     

    それゆえ、そもそも、代車として利用する車両は、事故車両と同一の車種・グレードである必要はないといわれており、用途等に相応する車種・グレードの車両の範囲でのみ代車料が認められるとされています。

    すなわち、事故車両が高級外車であった場合でも、当然に高級外車の代車料が認められるわけではなく(判例では、国産高級車の代車料の限度で認めた例があります。)、事故車両と同程度又はそれ以下のグレードでなければ代車料の相当性が認められないといわれています。

     

    代車の使用期間にも注意

    さらに注意を要するのは、代車の使用期間です。

    代車料は、修理や買替えに実際に要した期間のうち、必要かつ相当な期間に限り認められるとされています。

     

    この必要かつ相当な期間は、損傷の部位・程度や事故車両の車種等により異なるものの、一般的には、修理の場合はおおむね2週間程度、買替えの場合はおおむね1か月程度とされています。

    そのため、被害者と加害者側において、過失割合や損害額(修理の範囲、全損か否か等)で見解が対立し、修理や買替えに着手しないまま時間が経過し、代車使用期間が長期化した場合には、代車使用期間の相当性が問題となります。

     

    そもそも、修理契約や買替えの売買契約は、加害者側の意向等に影響を受けることなく、事故車両の所有者が当事者として行うことができるものです。

    また、一般的に、被害者には、損害の拡大を防止する義務があるとされ、速やかに修理や買替えに着手すべき義務があるとも考えられています。

    それゆえ、合理的な理由なく、不相当に長期化した使用期間の代車料は、原則として被害者の負担となると考えられています。

    修理費用や購入費用の原資がないというだけでは、長期化した使用期間の代車料が当然に認められるというわけでは無いので注意が必要です。

     

    交通事故の物損に関するご相談は当事務所までご相談ください!

    今回は交通事故による物損の評価損と代車料についてお話しました。

     

    評価損に関する基準が明確ではないため、評価損を請求する際には、様々な知識が要求されます。

    また、代車料を請求する際にも、注意すべき点がいくつかありますので、交通事故による物損でお困りの方はお気軽に当事務所までご相談ください。

    当事務所は、物損事故の知識・経験も豊富です。

    物損事故の場合でも、当事務所の交通事故無料相談をご利用することは可能ですので、ご活用下さい。