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為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)の問題点と解決方法 ほっかい法律事務所堀江 健太数年前になりますが、為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)に関し、そのリスクについて十分な説明のないまま取引(契約)を結ばされ、当時の円高により、巨額の含み損が発生してしまったので何とかしたいという相談を受け、取引の相手方金融機関(銀行等)と交渉し、解決した事案がありました。
そこで今回は、為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)に関する問題点と解決法についてお話したいと思います。
為替デリバティブ取引における問題点
冒頭でお話したように、為替デリバティブ取引では説明が不十分であったためにトラブルになってしまう事例が非常に多いです。
為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)は高度な知識を必要とする金融取引であるため、本来であれば取引を行おうとする金融機関には以下の2つの義務を果たさなければならないとされていますが、これが不十分であることがトラブルの引き金になるケースも少なくありません。
為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)について金融機関を交渉する場合、主にこの2つの義務について、契約前にきちんと金融機関がその責任を果たしたかどうかを確認することとなります。
そして、金融機関が責任を果たしていないと判断される場合、金融機関と交渉をして、解約金を払わず中途解約するなどにより解決できる場合があります。
(1) 説明義務
為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)の特徴の一つとして、契約期間が長く(3年から10年まで幅広くあります)、その間は中途解約ができないというのがあります。
中途解約をしようとする場合は、数千万から時には億を超える額の解約金を払う必要があるのが一般的です。
数年後の為替がどうなるかを見通すというのはプロでも非常に難しく、中途解約もできないとなると、契約者は多大なリスクを負うことになります。
このようなリスクについて、契約前に事前にきちんと説明をしなければならないというのが説明義務です。
(2) 適合性の確認
為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)の内容として、通常、ある通貨を、契約期間中、一定の行使価格で購入する権利を相手方金融機関から購入するというものが含まれています。
たとえば、5年間、3ヶ月毎に1万ドルを1ドル100円で買うなどです。
このような取引を行う目的として、一般的なものは、為替リスクのヘッジ(事前回避)です。
たとえば輸入業者であれば、円安により輸入価格が高騰し、利益が減少するリスクを抱えています。
しかし、一定の価格でドルを買う権利を有していれば、その価格以上に円安が進んだとしても、ドルを買う権利を行使すれば損失を防ぐことが可能になります。
では、取引先が全て日本国内で、為替の変動の影響を全く受けない会社の場合はどうでしょうか。
この場合、当然、為替リスクは無いのですから、為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)をする必要性は、投機目的以外ありません。
このように、ある取引(金融商品)がその顧客に適合した取引(金融商品)なのかを、契約前に事前に確認するのが適合性の確認です。
為替デリバティブ取引における説明不十分の際の解決法
もし、為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)について金融機関が上記の義務を果たしていないという場合には、金融機関と直接交渉をして、解決方法を探ることになりますが、金融機関が交渉において自らの義務違反を認めることは残念ながらあまりありません。
では、その場合にはどのような解決方法があるでしょうか。
解決方法は基本的に次の2つです。
1・金融ADRの利用
ADRとは裁判外紛争解決手続のことであり、文字通り裁判所とは別個の紛争解決機関で話し合いを行うものです。
為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)は、そのほとんどが銀行との間の取引ですので、全国銀行協会という団体の行っているあっせん委員会にあっせんの申立をすることになります。
あっせん委員会にあっせんの申立をした場合、銀行はあっせん委員会での話し合いに参加する義務があります。
業界団体である全国銀行協会が行う手続ということで、銀行に有利な判断をするのではないかと思われるかもしれませんが、あっせんを担当するあっせん委員は弁護士を中心に中立な第三者が行いますので、そのようなことはありません。
費用は無料なのですが、為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)のあっせんについては内容が専門的かつ複雑であるため、東京の銀行会館にある全国銀行協会で行うこととなっていますので交通費が必要になる場合があります。
金融ADR利用の際の流れ
大まかな流れとしては、申立後に、銀行と申し立てた側の双方にあっせん委員会から照会がなされます。照会事項としてはそれぞれ主に以下のようなものです。
・申し立てた側
(1)為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)の締結までの経緯
(2)為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)の経験が過去にあるか
(3)会社の概要、仕入先とその金額等
(1)は説明義務の関係、(2)(3)は適合性の関係での照会となります。
たとえば主な仕入先が海外の会社でドル建の取引をしている場合、為替変動リスクがあるということになりますので、為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)を行う必要性がある(適合性がある)と見られる可能性があります。
・銀行側
(1)為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)の締結までの経緯
(2)為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)の内容やリスクについてどの程度説明したか
(3)為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)を締結することの必要性(為替変動リスクの有無)を確認したか、確認したとしてどのようにして確認したか
(1)(2)は説明義務の関係、(3)は適合性の関係での照会となります
これらの照会に対する回答を踏まえた上で、東京の全国銀行協会であっせんを行います。
あっせん委員が双方から個別に話しを聞きますので、銀行側と直接話すことはありません。
あっせん委員会としては、基本的に1回目の期日であっせん案を提示まで行くように心がけているようです。
私が先日あっせんを利用した件では、中途解約による解約清算金のうち4割を免除してもらうという内容であっせん案が出され、その内容で解決しました。
詳細な金額までは書けませんが、数千万円の支払いを免れることになりました。
2・裁判所での訴訟
先述したように為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)を行う場合、銀行は説明義務を果たすと共に、適合性を確認する必要があります。
よって、その義務が果たされていない場合、訴訟を通じて損害賠償を請求することが可能にです。
ただ、訴訟の場合、解決まで短くても半年、通常は1年程度かかることから、私としては、あっせん手続を利用することをお勧めしたいと思います。
為替デリバティブ取引でお困りの方は弁護士に相談を
為替デリバティブ取引は専門的で高度な知識を必要とする金融取引ですので、金融機関からの説明が十分でない場合、多大なリスクを負ってしまう可能性があります。
今回は2つの解決方法についてお話しましたが、為替デリバティブのトラブルでお困りの方は早めに法律家に相談することをおすすめします。
当事務所では為替デリバティブ取引(通貨オプション取引)に関する相談は、回数・時間を限定せず、無料で承っておりますので遠慮無くご相談下さい。
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