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交通事故で人身傷害などの保険金請求!不払いなどトラブル事例も ほっかい法律事務所堀江 健太交通事故の任意保険について、知っているようで知らない部分も多いと思います。
今回は請求時に損をしないために改めて知っておくべき、任意保険に含まれる「人身傷害特約」や「対物全損時修理差額費用特約」、保険金の不払いなどのトラブル事例についてお話します。
交通事故の任意保険に含まれる「人身傷害特約」とは?
現在、人身傷害特約を付けないで任意保険に加入することはほとんどないかと思います。
改めて説明しておきますと、人身傷害特約は、自分に過失があっても過失割合に応じて減額されること無く保険会社の定める算定基準に従って算定された損害額が支払われるというものです。
ですので、相手方のいない自損事故であっても保険金が支払われます。
保険加入時の案内では「加害者との示談成立前であっても支払われる」という旨の記載がなされていることが多いです。
本来は交通事故の加害者へ請求前に保険金を請求できる
交通事故のご相談を受けておりますと、保険会社から「加害者に請求してからでないと人身傷害保険金は請求できません」とか、「10対0の事故の場合、加害者が全額払うので人身傷害保険金は請求できません」と言われ、払ってもらえなかったという話をよく聞きます。
また、私自身被害者の方の代理人となって、被害者の方が加入している保険会社に人身傷害保険金の請求をした時に、上記のような回答を受けたことが何度かあります。
このような回答をする担当者は、自社の保険の約款(保険契約のルール)に違反する回答をしていることになります。
交通事故による人身傷害保険金を請求できないと言われた場合は
保険の約款(保険契約のルール)に書いてあるのは、「交通事故によりこれこれの損害が発生した場合、この基準に従って支払をします。支払った場合は加害者に対する請求権はこちらに渡してもらいます。」というような内容であって、まず加害者に請求しなければならないなどということはどこにも書いていません。
ですので、もし人身傷害保険金について保険会社から上記のような回答を受けた場合は、「なぜ払えないんですか。約款にそのようなことが書いてあるんですか」と担当者に言ってみてください。
上司に相談するなどして自分が間違っていることに気付き、基準に従って算定した額を支払います、という回答に変わると思います(もし変わらない場合は当事務所にご相談下さい)。
次に「対物全損時修理差額費用特約」の不払い問題について、実際の事例を元にお話ししていきます。
交通事故の「対物全損時修理差額費用特約」保険金請求での不払い事例
私が過去に依頼を受けた件で、とある大手の損害保険会社より保険金の不払いに該当すると思われる対応を受け、他にも同様の対応を受けている事例があるのではないかと考え、依頼者から了解を得て金融庁に対して調査の要請を行いました。
まず「対物全損時修理差額費用特約」とは?
この記事をお読み頂いている方の中にも、加入している任意保険に「対物全損時修理差額費用特約」という特約が付いている方がおられるかと思います。
この特約は、対物賠償責任保険で支払いの対象となるのは、相手方の自動車の時価額までであるところ、実際にかかる修理費が、時価額を超えてしまうケースにおいて、その差額分を補償するというものです。
なぜこのような特約が用意されているのかというと、買い替えることの手間や車への愛着から相手方が廃車ではなく修理を希望することがあるところ、車の時価額を超えても修理できるようにして、示談をスムーズに進めることができるようになるためです。
私の依頼者の相手方(以下「加害者」と言います。)も、任意保険にこの特約を付けていました。
本来の特約が適用されなかったため裁判へ
私の依頼者の車両の時価額が65万円程度であるのに対し、修理費が95万程度であり、依頼者は修理を希望していましたので、まさにこの特約が適用されるべき事案でした。
しかし、保険会社の担当者は、こちらにこの特約の存在を知らせることなく、あくまでも時価額での賠償を主張してきたため、依頼者は納得できず、裁判により解決することとなりました。
裁判が進む中で、和解協議が行われることとなったのですが、最近の任意保険にはこの特約が付けられることが多いため、念のため、保険会社から依頼されている加害者の弁護士に確認したところ、この特約が付いていることが発覚しました。
私としては、この特約を使って修理費相当額が賠償されるのであれば和解は可能であると思い、これで一件落着と安心したのもつかの間、保険会社から依頼されている加害者の弁護士から実際に修理されたわけではないから特約は使えないと回答があったのです。
しかし、修理しようにも、そもそも保険会社がこの特約の存在を知らせること無く、時価額での賠償にこだわったため、依頼者は解決まで車両を修理することなく保管するにも費用がかかることから、廃車にしてしまっていました。
この件は、結局和解に至ることもできず、裁判が続くことになってしまいました。
保険会社が情報提供しなかったため保険金不払い問題へ
そもそもこの特約をなぜ付けるのかといえば、被害者との交渉を円満に解決するためです。加害者が契約している保険会社のWEBサイトでもそのようにうたわれています。
この件では、もし加害者が保険会社から「時価額より修理額の方が高いのですが、被害者は修理を希望しています。特約を使いますか?」と聞かれれば、スムーズに解決するために当然特約を使うことを選択したでしょう。
しかし、示談交渉に当たっている保険会社が、支払い額が大きくなることを避けようとしてか、加害者に十分な情報を提供しなかった結果、加害者は裁判を起こされる結果となってしまったのです。
加害者からすれば、特約の保険料を払っているのに、その特約による賠償がなされずに被害者から裁判を起こされているのですから、詐欺に遭ったような気持ちではないでしょうか。
そもそも、任意保険契約には示談代行サービスが付されていますから、契約者は、相手方の主張内容や修理金額が時価評価額を超えていることなどを逐一把握しているわけではありません。
ですから、保険会社の方から状況を説明の上、本件の特約を適用するかどうか確認しない限りは、本件の特約が適用される可能性はまず無いのです。
私は、保険会社が特約の保険料を契約者から受け取っておきながら、特約を使わずに解決しようとしていることは大問題であると考え、監督官庁である金融庁に特約が正しく適用されているかどうか保険会社に対して調査を行うよう要請しました。
交通事故の保険金請求でお困りの方はご相談ください
もしかしたら、今回の依頼者の件の保険会社の対応は氷山の一角かもしれず、多くの人たちが特約の適用を受けられていない可能性があると思います。
もし、この記事をお読み頂いている方やそのお知り合いで同じような対応に遭った方がおられましたら、金融庁に追加で情報を提供したいと思いますので、ぜひ当事務所まで情報をお寄せ下さい。
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