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遺産分割を弁護士依頼した場合にかかる時間について ほっかい法律事務所横山 尚幸※横山尚幸弁護士は令和3年6月30日をもって当事務所を退所いたしました。本記事は当事務所在籍中に執筆したものです。遺産分割について相談したいけれど、どのような手続きになるのか、どれくらいの時間がかかるか、など色々と不明点が多く不安な方もいらっしゃると思います。
今回は、遺産分割について「遺産分割とはどのようなものか」「手続きの流れやかかる時間」「弁護士に頼むメリット」などについてお話していきます。
遺産分割とは?
相続は、人の死亡という事実により当然生じる相続財産の承継です(=当然承継)。
相続の開始により、死者(被相続人)に属していた財産上の一切の権利義務が承継されます(=包括承継)。相続人が二人以上いる場合、これらの相続人は共同して相続人となり、各共同相続人はその相続分に応じて被相続人の権利義務を承継します(=共同相続)。
相続財産を共同相続人全員で共有している状態を解消し、個々の相続財産を各相続人の単独所有にするための手続が遺産分割です。
家事調停とは?
遺産相続は家庭裁判所で扱われる家事事件のため、「家事調停」という手続きが行われます。
家事調停は、家庭裁判所の裁判官及び家事調停委員により構成される調停委員会が主宰し、当事者の合意を斡旋する手続です。
家庭に関する紛争については、一般の民事紛争に比して当事者聞の感情的な対立が激しく、時には相手方の人格攻撃に終始することもあります。
家事調停は、第三者が当事者から十分に事実関係及び主張を聴取し客観的な見地から意見を述べることにより、当事者の怒り、憎しみ、悲しみなどの感情を宥和し納得した上での合理的な解決へ導くための手続とされています。
遺産分割はどのような手続で行う?
遺産分割は共同相続人の協議によることを原則としており、協議が成立するために特別の方式が要求されているわけではありません。
もっとも、合意の存在と内容を明確化するため、また、手続(登記名義変更,預貯金の解約手続等)に利用するため遺産分割協議書が作成されることが一般的です。
遺産分割に特別の方式が要求されていないことから、裁判所等を通さずに当事者間において任意の協議がもたれることが多く、協議が成立しない場合に遺産分割調停を利用することになります。
前記のとおり、家事調停はあくまで当事者の合意を斡旋する手続なので裁判所が強制的に遺産分割の方法・内容を判断することはありません。
遺産分割調停において当事者間の合意が成立しない場合には調停不成立となり家事審判手続に移行します。
家事審判手続では当事者間に合意が成立しない場合、最終的には裁判所が当事者を拘束する判断をすることになります。
遺産分割調停の平均審理期間について
出典:裁判所「家庭裁判所における家事事件の概況及び実情並びに人事訴訟事件の概況等」より
上のグラフは平成8年から平成28年までの遺産分割事件の平均審理期間をあらわしたものです(調停及び審判の両手続を経た事件についても1件と扱う)。平成8年には17.8ヶ月かかっていましたが、平成28年には約3分の2の11.2ヶ月まで短縮されています。
長期的にみると短縮傾向にありますが、ここ数年12ヶ月前後で推移しており、遺産分割が当事者間の任意の協議でまとまらず、調停・審判手続に移行する場合、かなり時間がかかるものと思って頂いた方がよろしいかと思います。
遺産分割を弁護士に頼むことのメリット
遺産分割を弁護士に頼むことによって次のようなメリットがあります。
・審判を見据えた活動を行えることから、依頼者にとって不利な内容の合意を締結しないことができ、紛争の長期化を避けることが期待できる。
・煩雑な手続を回避することができる。
・経験に基づく協議を行えることから依頼者の希望を適切に相手方に伝えることができ、紛争の泥沼化を避けることができる。
それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
遺産分割が長引くケースでも審判を見据えた活動で長期化が避けられる
当事者間の任意の協議や遺産分割調停では当事者間の強い思いが錯綜し、争点が無制限に広がってしまうことがあります。
・○○が生前、自宅購入の頭金をもらっていた。
・○○だけが、生命保険から保険金を受領した。
・私が近所に住んでいて色々手伝っていた。○○は盆と正月に帰ってくるだけ。
・預貯金の残高を見せてもらったが、数年前から大幅に減少している。
・預貯金を隠されている気がする。
・生前、全財産をお前に任せると言われていた。
・相続人の○○とはもう十年以上交流がなかった。
・お墓を管理する気がないと言われた。
・いつの間にか遺産に含まれていたはずの自宅不動産の名義が変えられていた。
・遺言がある。
以上の話は遺産分割のご相談を受けた際によくでてくる話です。
しかし、本来遺産分割調停の対象となる遺産は「相続開始時に存在」し、かつ「分割時にも存在」する「未分割」の遺産であり、すでに被相続人の名義ではなくなっている財産は遺産分割協議を行えば当然に解決できるわけではありません。
遺言の有効性判断や祭祀承継も、本来は遺産分割の対象ではありません。
また、名義が変更された経緯によっては、特別受益として考慮できる場合に損害賠償請求をすることができる場合もありますが、その判断は法的な判断であり専門家でなければ判断が難しいところです。
前記のとおり、調停・審判の平均審理期間が約1年かかることから、できる限り交渉で終わらせたいと思う方が多いですが、最終的な審判の見通しが立たない限りはどのような提案をしていいか、相手方からの提案内容が適切な内容なのか判断がつきません。
弁護士が入ることで、最終的な見通しを持って手続を選択することができ,不利な内容で遺産分割協議書を取り交わす心配はなくなります。
任意の協議で合意が難しいと判断した場合には、早期に遺産分割調停に進むことも可能となり不必要に交渉を長引かせることもありません。
遺産分割の煩雑な手続を回避できる
ご家族の構成によっては、多くの相続人と協議しなければならないこと、交流のない相続人と協議しなければならないこともあります。
特に、高齢で亡くなられた被相続人にお子様がおらず兄弟が相続人になる場合(そのご兄弟もお亡くなりになっている場合には,被相続人の甥・姪が相続人となります。)、被相続人が養子縁組をしており実父母方兄弟、養父母方兄弟が多くいる場合には相続人が多くなりやすいです。
また、被相続人が再婚をしている場合には、交流のない異母兄弟、異父兄弟がいることもあります。
相続人の人数が多い場合も交流のない相続人がいる場合も、専門家の協力なくして相続人(及びその住所)を正確に把握すること、全相続人と協議することは非常に困難です。
さらに、預貯金の払戻・解約については金融機関ごとに書式が用意されていることも多く、金融機関の数だけ書類を用意しなければなりません。
不動産の名義変更については、法務局に書式が用意されているわけではなく、相続人間の協議内容に合わせて書式を用意しなければなりません。
また、司法書士の協力を得る場合も多いですが、日頃から連携を取っている隣接仕業がいるからこそスムーズな手続が可能になります。
相続税について相談を希望される方には、税理士の方を紹介することも可能ですのでこちらもぜひご相談ください。
遺産分割事件の経験に基づく協議ができる
被相続人との生前の交流状況から、できる限り自分自身で全ての遺産を相続したいと希望される依頼者の方も多いです。
しかし、相続人本人が法律的な説明を行わないまま全遺産を相続することを主張しても、相手方が不信感を持ちこちらの希望を十分に理解してもらえない場合もあります。
相続人が複数いる場合には、相続人ごとにことなる意向を示されどのように対応していいか判断に困る場合もあります。
遺産分割事件の経験が豊富であり、法律的にも丁寧な説明ができるからこそ全ての遺産を相続したいという依頼者の希望について他の相続人から理解を得られることもあります。
遺産相続は当弁護士事務所にお任せ下さい!
遺産分割の話し合いを始める前から遺産分割が終了するまで、全ての段階でサポートをさせて頂いております。
「遺産分割で揉めている」という段階でなく、「遺産分割で揉めそう」という段階でもご相談をお受けしております。
遺産相続などの相続問題に関する無料相談も実施していますので、お悩みの方は当事務所までご相談ください。