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膝の靱帯損傷(動揺関節)による後遺障害等級の認定のポイントは? ほっかい法律事務所横山 尚幸※横山尚幸弁護士は令和3年6月30日をもって当事務所を退所いたしました。本記事は当事務所在籍中に執筆したものです。先日、交通事故によって、膝内側側副靭帯損傷を負った方のご相談を受けました。
靱帯損傷による慰謝料は、後遺障害の程度によって等級が認定され、その等級によって慰謝料の金額が変わります。
今回は、後遺障害等級の認定のポイントや、認定してもらうために必要なこと、慰謝料の例などをご紹介していきます。
後遺障害の等級は認定の要件が複雑であるため、診断書の内容と照らし合わせて詳細に検討することが重要です。
お悩みの方は、今回のコラムをぜひ参考にしてみてください。
靱帯損傷とは?その後遺障害である動揺関節とは?
靭帯は、強靭な結合組織の短い束で、骨と骨とをつなぎ離れないようにする役割を持っています。
膝関節には、前十字靭帯、後十字靭帯、内側側副靭帯、外側側副靭帯があります。
このうち膝内側側副靭帯と膝外側側副靭帯は、膝の左右の安定を保つ働きをしています。
膝内側側副靭帯損傷は、膝に外側から大きな衝撃が加わったときに生じるもので、ラグビー・相撲・サッカー等のスポーツや交通事故で傷害を受けることが多いといわれています。
症状の程度は様々あり、圧痛のみで外反不安定性をほとんど示さないものから、靭帯が完全に断裂してしまうケースもあります。
膝内側側副靭帯損傷により、歩行中に膝関節が外れそうになったり、踏ん張りがきかなくなったりと、関節の安定性機能が損なわれてしまいます。
膝関節の後遺症として、動揺関節(関節の可動性が正常より大きくあるいは異常な方向に動き、膝がぐらつく)が残ることがあります。
動揺関節の後遺障害等級とは?
動揺関節は、残存する障害の程度によって、次の後遺障害等級が認定される可能性があります。
8級 常に硬性補装具を必要とするもの
10級 時々硬性補装具を必要とするもの
12級 重激な労働等の際以外には硬性補装具を必要としないもの
12級 習慣性脱臼、または弾発膝動揺関節は機能障害に分類されます。
機能障害は、痛いから曲げられないという疼痛による可動域制限とは異なり、関節の動きが制限される原因となる器質的損傷が生じている状態をいいます。
器質的損傷とは、外見上(レントゲンやMRI含む)明らかに損傷状態が認識されるもののことです。
機能障害の認定には、器質的損傷が生じたことを証明することが必要となります。
なお、疼痛による可動域制限は、局部の神経症状(12級13号または14級9号)として等級評価がされることになります。
動揺関節を後遺障害として認定するために必要なこと
膝の動揺関節を後遺障害として認定してもらうためには次の3つのことが必要です。
①靭帯損傷を画像で裏づけること
②動揺の程度を各種検査で裏づけること
③膝装具の作成と装具の必要性について主治医の指示が出ていること器質的損傷については、①のとおり膝のMRI画像や関節鏡検査で裏付けることになります。
しかしそれだけではなく、後遺障害の認定基準では、動揺の程度に応じた装具必要性が基準とされているため、②と③も必要とされます。
②については、膝の痛みに有用な神経学的検査で靭帯損傷が動揺性を生じさせていることを明らかにし、ストレスX線撮影(ストレスレントゲン)でその裏づけを取ることが必要となります。
ストレスレントゲンとは、手または器具で圧力をかけ、靱帯の損傷によって生じる骨のズレをあえて生じさせた状態でレントゲンを撮ることです。
健側と患側を両方撮影し、それぞれストレスをかけた状態とかけない状態の二通りで撮影します。
これによって明確な左右差がみられれば、膝関節の動揺性が明らかとなります。
診断書にその旨を記載してもらいましょう。
ストレスレントゲンは後遺障害を証明するために必要ですが、治療に必要な検査というよりは、単に障害の程度を確認するための検査であるため、患者側から医師に診断をでお願いしなければならないこともあるようです。
靱帯損傷の後遺障害による慰謝料は等級によって異なる
認定される後遺障害等級によって、受け取ることができる賠償額に大きな違いが出ます。
請求できる損害項目についてはこちらをご確認下さい。
例えば、後遺障害慰謝料については、後遺障害等級によって次のように違いがあります(金額は、いわゆる裁判基準(赤い本)に基く)。
8級 830万円
10級 550万円
12級 290万円後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料以外に逸失利益も請求することができます。
逸失利益を算定する際には、後遺障害が残存することによって、事故前と比べどの程度労働能力が喪失したか(労働能力喪失率)を基準に算定することになります。
逸失利益は「基礎収入額×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数」という計算式によって算定されますが、労働能力喪失率についても、次のような違いがあります。
8級 45/100
10級 27/100
12級 14/100※労働能力喪失期間が10年程度に制限されることもあります。
靱帯損傷による後遺障害のお悩みは弁護士にご相談を
交通事故やスポーツなどで靱帯を損傷し、後遺障害が残った場合、残存する後遺障害の程度(等級)に応じた慰謝料を請求することができます。
等級を認定してもらうためには、靱帯損傷を画像で裏づけること、動揺関節の程度を検査で裏づけること、膝装具の作成と必要性について主治医の診断や指示が出ていることが必要です。
当法律事務所では、後遺障害認定の判断のポイントを理解しているからこそ、アドバイスできることもあると思います。
靱帯損傷の後遺障害でお悩みの場合には、当事務所の交通事故無料相談をご利用下さい。