ブログ
-
遺産調査はするべき?調査方法や弁護士へ依頼するメリットについて ほっかい法律事務所堀江 健太遺産相続において、亡くなった方(被相続人)がどのような遺産をもっているのか全然分からないまたは一部しか分からないということは珍しくありません。
このような場合には遺産調査をすることをおすすめ致します。
今回は遺産調査を依頼するメリットや調査の方法についてのお話です。
遺産内容がわからない場合は遺産調査を
遺産の内容が分からない場合というのは、概ね以下のような場合です。
①被相続人と同居していたが、生前にどのような財産を持っているか聞いていなかったので分からない
②被相続人と別居していたし、生前にどのような財産を持っているか聞いていなかったので分からない
③被相続人と別居していて、亡くなった後、被相続人と同居していた相続人から遺産について開示を受けたが、それが全部であるかどうか分からない
この中で弁護士に相談に来られることが多いのは③です。
①や②について言えば、通帳や保険証券や土地の権利証など、被相続人が保管していた資料から遺産の概要が掴めることがほとんどです。
問題は③で、被相続人が保管していた資料は全て被相続人と同居していた相続人が持っていて、こちらは確認できないという場合に遺産調査をするべきか、それとも開示された内容を信じて遺産分割をすべきかどうか迷っている方も多いのではないでしょうか。
遺産調査のメリットは受け取る財産が増えること
これまでの経験で言えば、開示された遺産が全てである場合より弁護士が遺産調査を行うことで遺産分割によって受け取る財産が増える場合の方がおそらく多いと思います。
弁護士が遺産調査を行うことで遺産分割によって受け取る財産が増える場合というのは、主に以下の3つです。
①開示された遺産には無い遺産が見つかる場合
②被相続人と同居していた相続人が生前に被相続人から財産を譲り受けていた場合
③被相続人と同居していた相続人が、被相続人が亡くなる直前に預金を払い戻していた場合
②でよくあるのは、元々親(被相続人)名義だった土地・建物について、生前に同居している子供に名義が変更されるというものです。
この場合、土地・建物を贈与された相続人には「特別受益」というものがあることになり、土地・建物を贈与されていない他の相続人との公平を図るために、土地・建物を贈与された相続人の取り分が減り、他の相続人の取り分が増えることになります。
③の場合は、被相続人が危篤状態で、預金の払い戻しについて了解できるような状況ではなかったということになれば、本来は勝手にお金を下ろすことはできませんので、お金を下ろした人はその分を返す必要があります。
遺産調査で弁護士が行うことは?
上記のことから弁護士が遺産調査において行うのは
①開示された遺産以外の遺産の有無の調査
②被相続人の財産が生前に贈与されていないかの確認
③被相続人の口座から被相続人の意思によるものではない払戻(お金の引き出し)の有無の調査
ということになります。
では、それぞれについて弁護士がどのような調査を行うのかを見ていきたいと思います。
①開示された遺産以外の遺産の有無の調査
■不動産
一番簡単なのは、毎年5月前後に各自治体から届く固定資産税の納税通知書を確認することです。
しかし、被相続人と同居していない場合は、同居していた相続人が通知書を押さえてしまっていて確認できないので、不動産を持っていると思われる各自治体(市町村)から固定資産課税台帳(名寄(なよせ)帳)を取り寄せることになります。
固定資産課税台帳には、納税義務者ごとに納税義務者が持っている土地・家屋がまとめられていますので、それにより所有している不動産が分かります。
ただし、あくまで自治体(市町村)ごとの台帳のため、不動産の所在地の自治体(市町村)が分からない場合は、調査できません。
■預貯金
預金口座があると思われる金融機関(銀行・信用金庫・農協など)に個別に問い合わせをすることになります。
全くあてがない場合には、電気料金や水道料金は口座振替で支払われることが多いため、電力会社や水道局に契約内容(引落し口座の情報など)を問い合わせます。
金融機関が分かっていれば、預金口座の有無や亡くなった時点の残高だけでなく、亡くなる前の一定期間の取引履歴を取得することもできます。
■保険
保険契約があると思われる保険会社に個別に問い合わせをすることになります。
また、預貯金の調査において取引履歴を取得することで、保険契約の有無が分かることもあります。
たとえば、毎月「ホケンリョウ(ニホンセイメイ)」といった引落しがあれば、日本生命との間で保険契約があると考えられますので、日本生命に問い合わせをします。
②被相続人の財産が生前に贈与されていないかの確認
こちらについては、本来あるはずの財産が無いと考えられる場合に、その財産について調べていくことになります。
例えば
・退職金が3000万円入ったはずなのに、亡くなった時点では100万円くらいの預貯金しか残っていない
・実家の土地・建物は親の名義だったはずなのに、開示された遺産の一覧に中に入っていない
といったような場合です。
なお、不動産であれば名義が移転した場合には登記がされて記録が残るので生前贈与の有無について調査は難しくないですが、預貯金の場合、お金が減っていたとしても、それは被相続人が使ったからなのか、生前に他の相続人に贈与したからなのかはわからないため、証明が難しいという問題があります。
③被相続人の口座から被相続人の意思によるものではない払戻(お金の引き出し)の有無の調査
払戻(お金の引き出し)の有無については、①で行う預貯金の取引履歴の調査で可能であるため、それが被相続人の意思によるものではないのかどうかを調査していくことになります。
被相続人が預金の払い戻しについて判断できる状態であったかどうかについては、以下のような資料から調査していきます。
・被相続人が通っていた病院のカルテ
・介護保険の要介護度の認定資料
この介護保険の要介護度の認定資料ですが、要介護度の認定を行う際は、身体機能だけでなく、認知能力や生活能力についても調査されます。
認知機能の調査においては、「生年月日を言うことができるか」「今の季節や今居る場所のことが分かっているか」などを確認するので、調査時点でどの程度の判断能力があったかがわかります。
また生活能力の調査においては、誰が金銭の管理をしているかどうかが調査されるため、被相続人が管理していたのか、同居していた相続人が管理していたのかが分かります。
遺産調査を弁護士に依頼する際の費用
遺産調査を行うような事案の場合、遺産調査が終わった後の遺産分割協議がすんなり進むことはあまり無いため、通常は、遺産調査のみを単独で受任するのではなく、遺産分割に関して受任した上で、遺産分割協議の前提として遺産調査を行う形となります。
ただ、遺産調査の結果、相手方が適切に遺産を開示していることが分かれば、遺産分割協議には柔軟に応じたいという方もおられますので、そういった場合は、遺産調査のみを行うこともあります。
当事務所の場合、遺産調査のみであれば10万円(税別)でお受けしております。
遺産分割について受任する場合には、遺産調査は業務に含まれますので、遺産分割に関する弁護士費用とは別個に弁護士費用が発生することはありません。
遺産調査にかかる実費としては、以下のようなものがあります
① 戸籍の取得費用
② 不動産登記の取得費用
③ 金融機関からの取引履歴の取得費用相続人の数にもよりますが①も②も1万円以下に収まる場合がほとんどです。③については高額になることがあります。
取引履歴に関しては無償で発行してくれる金融機関も多くありますが、たとえば、みずほ銀行などは1ヶ月あたり216円かかってしまい、かつ取引が全く無い月でも手数料を取られるため、仮に10年分取り寄せる場合、10年×12ヶ月×216円=25,920円もかかってしまいます。
遺産調査に強い弁護士とは?
遺産調査に強い弁護士を探す際のポイントですが、相談の時に以下のような点に注目して探されると良いかと思います。
・どのような遺産調査を行うかについて具体的な説明があるかどうか。
・遺産調査にかかる費用・実費について具体的な説明があるかどうか。
すなわち、あなたが説明した事案の概要を踏まえて、「○○銀行への取引履歴の照会が考えられます」「○○市から固定資産課税台帳を取り寄せましょう」「弁護士費用は○○円で、実費が○○円程度かかることが想定されます」といった具体的な説明がなされるならば、信頼できる弁護士である可能性は高いかと思います。
遺産調査をすべきかお悩みの方は当事務所までご相談下さい
今回ご紹介した遺産調査は、弁護士に依頼せずに自分で行うことももちろん可能です。
しかし、問い合わせ先ごとに問い合わせに必要な資料が異なりますし、集めた資料を分析することも慣れていないとなかなか困難かと思います。
弁護士に依頼することで、上記のような資料の取り寄せや分析を専門的に行ってもらうことができるので、十分に納得した上で遺産分割の話し合いに臨むことができるようになります。
遺産について調査した方が良いのかお悩みの方は、ぜひ当事務所の遺産相続無料相談をご利用下さい。