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後遺障害診断書の見方。チェックすべき項目やポイントは? ほっかい法律事務所横山 尚幸※横山尚幸弁護士は令和3年6月30日をもって当事務所を退所いたしました。本記事は当事務所在籍中に執筆したものです。みなさんこんにちは。弁護士の横山です。
交通事故などに遭い、治療を続けていても事故に遭う前の状況には戻らない場合には、後遺障害等級の認定手続きを行うのが一般的です。
この際に必要になる診断書のことを「後遺障害診断書」といいます。
今回は、後遺障害診断書の見方についてのお話です。
後遺障害診断書でチェックしておきたい項目や、実例をふまえながら診断書の重要性についてお話していきます。
後遺障害診断書とは?
冒頭でもお話したように、「後遺障害診断書」とは交通事故などでケガをしてしまい、治療を続けたにもかかわらず症状が改善しない、事故前の状況に戻らないといった場合に、後遺障害が残っていることを認定してもらうために主治医に作成してもらう診断書(定まった書式有り)のことをいいます。
後遺障害診断書の作成費用は病院が自由に決定することが出来ますが、5,000~10,000円程度の費用が必要になるケースが一般的です。
作成費用は、後遺障害等級が認定されると相手方保険会社負担となりますが、非該当となると、当方負担(弁護士費用特約に加入されている場合には、弁護士費用特約から支出される場合もあります)となります。
後遺障害診断書は、医師が作成するため、内容について確認しない、疑問を持たないといった被害者の方も多いかと思いますが、後遺障害等級を決める際の重要な診断書であるため、被害者も内容をしっかりとチェックする必要があります。
後遺障害診断書と後遺障害等級との関係
後遺障害等級認定で認定されると、非該当の場合とは異なり、
・後遺障害慰謝料
・逸失利益等が請求できるようになります。
後遺障害等級の認定機関である自賠責損害調査事務所においては、後遺障害診断書の内容をもとに認定を行うため、その記載内容がとても重要になります。
適切な損害賠償を受けるためには、後遺障害等級が適切に認定されることが必要となり、後遺障害等級が適切に認定されるためには、適切な内容の後遺障害診断書を作成してもらうことが重要になるという関係を有しております。
後遺障害診断書の見方を誤れば適切な損害賠償を受けられない
当事務所でも、当初、後遺障害診断書の記載が不十分であったため適切な後遺障害認定がうけられず、当事務所に依頼後、後遺障害診断書の記載を修正して、適切な後遺障害認定と賠償が受けられたという事案がありましたので、ご紹介致します。
(※実際にあった事件ですが,わかりやすくするために多少改変しています。)。
その事案では、被害者の方は事故によって左足を痛めて明らかに症状が残存している状態であったのに、自賠責保険の等級認定結果は「非該当」(等級がつかず、後遺障害に関する賠償はなし)という結果でした。
被害者の方はその結果に納得がいかず、当事務所にご相談に来てくださいました。
等級認定の結果に納得できないというお話でしたので、私の方で等級認定結果に大きく関わる書類である「後遺障害診断書」を確認しました。
確認した結果、後遺障害診断書の内容としては、左足の点も含めて等級の認定を受けることは難しいと思われるものでした。
そのため、当初は「一応、異議申立てという手続がありますが、結論が覆るのは難しいかもしれません。」という趣旨のお話をさせていただきました。
ところがよくよくお話を聞いていると、通院加療中に主治医の先生から「左足の長さが短くなっている」という話があったということが判明しました。
交通事故による受傷の結果、1つの足の長さが1cm以上短くなった場合には、13級という等級認定の対象になるものとされています。
その被害者の方はまさに1cm程足が短くなっているという話があったそうです。
私は、被害者の方に足が短くなっていることについて主治医の先生に診断書を書いてもらうようお願いしました。
そして、書いてもらった診断書を証拠として異議申立手続を行いました。
約1か月後、あっさりと13級が認定され、その等級を基に被害者の方はご納得のいく十分な賠償を受ける形で示談が成立しました。
このように、ケースによっては主治医の先生の記入漏れ等により本来等級認定を受けられるはずなのに非該当という結果となってしまう例も少なくないのです。
後遺障害診断書の見方とチェックしたいポイント
前述したように後遺障害診断書には決められた書式があり、医師に後遺障害の症状を非常に事細かく記載してもらわなければなりません。
多くの記載項目があることから、特にチェックしたい後遺障害診断書の項目について、ポイントをふまえながら確認していきましょう。
既存障害
記載があると、マイナスに働く可能性がある項目です。
本件事故による後遺障害に影響を及ぼしていることが明確である既存障害についてのみ、記載をお願いしたい項目です。
自覚症状
被害者が医師に申告している症状を記載します。
どのような症状なのか、どの部位がどのように痛むのかなど、医師に詳細に申告、説明し、具体的に記載してもらうようにしましょう。
他覚症状および検査結果,精神神経の障害
後遺障害認定では、他覚所見が重視されます。
この欄の記載は、非常に重要になると考えています。
各種画像(XP、CT、MRI等)からわずかでも認められるものや、触診で感じられた小さな違和感のようなものを含め、細かな所見であっても記載をお願いしたいところです。
障害内容の増悪、緩解の見通しなどについて
後遺障害は、定義上は、治療を受けたにも回復せず、将来的にも回復が見込めないものを指すので、この項目に「回復予定」等不必要な内容が記載されていないかは気になるところです。
以上が、後遺障害診断書の内容になります。
実際に申告した内容と記載されている内容に誤りがないか確認し、疑問点などがあれば医師に確認するようにしましょう。
事例でご紹介したように、意図しない記載漏れ等がある可能性も十分あります。
検査内容などや検査内容に対するコメントは、内容を確認したその日のうちにメモなどに残しておくことをお勧めいたします。
後遺障害診断書の見方がわからない、不明な場合は弁護士へ
一般の方は、後遺障害診断書の見方がわからず、内容を読み取ったり医師の話の中で後遺障害等級認定と関係する要素があったかどうかを見極めたりすることは困難かと思われます。
そのため、結局、非該当のままで残存する症状に見合った十分な賠償を受けられずに示談をしてしまうケースもあるでしょう。
保険会社から送られてきた後遺障害等級認定結果が非該当だったとしても、すぐにあきらめずにまずは一度弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
当事務所は、交通事故賠償のご相談については,電話相談も無料でお受けしております。
後遺障害診断書などの見方がわからない場合などもお気軽にご連絡ください。