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交通事故の素因減額とは?保険会社からの素因減額主張への対応について ほっかい法律事務所大崎 康二交通事故損害賠償に関する示談交渉では、保険会社側から「素因減額」の主張がされることがあります。
「素因減額」とは?
例えば、椎間板ヘルニアが問題になるケースでは、その椎間板ヘルニアは、事故前からの加齢による変性などが原因で存在していたものの、無症状で推移していたため治療歴などはなく、ただし事故がきっかけになって自覚症状を発症したというような主張がなされるケースがときどきあります。
このようなケースのうち、もともとの既往症(これまでにかかったことのある病気で、現在は治癒しているもの)がなければ同じ被害が発生したとは考えにくいという場合には、交通事故によって生じた全ての損害賠償を加害者に負担させるのは不公平であるとして、損害額から一定割合の減額がなされることになります。
このような発想によって損害賠償額の減額を行うことを,交通事故の損害賠償請求の実務では「素因減額」と呼んでいます。
「素因減額」は、椎間板ヘルニアだけでなく、脊柱管狭窄症や脊椎の骨棘形成の事例や、腱板断裂の事例、精神疾患の事例などでも問題にされやすく、様々な事件で問題となりうる論点であるといえます。
保険会社から素因減額の主張が行われるケース
既往症の存在が前提
ところで、訴訟において「素因減額」の主張が認められるためには、そもそもの既往症の存否や、その既往症による治療経過への影響の程度など、相応の医学的根拠を示すことが必要となります。
しかし、現実には合理的な医学的根拠が不明確なまま、保険会社側の一方的な判断による「素因減額」の主張がなされるような不当なケースもあり、それに対する対応に困って相談に来られる相談者の方も多数おられます。
このような場合に保険会社の主張する「素因減額」の主張について具体的に検討すると、まず「素因減額」が認められるためには、既往症の存在が必要になります。
既往症の存在は、「後遺障害診断書」に既往症の記載があればそこから判断することができますし、後遺障害診断書にそのような記載がない時でも、例えば椎間板ヘルニアの形状などからそのヘルニアが交通事故の衝撃によって発生したものか、加齢によって交通事故のから存在したものであるのかが判断されることがあります。
しかし、そのような医学的な根拠に基づくことなく、単に交通事故被害者が「高齢である」ということを理由に、保険会社から「素因減額」の主張がなされることもあります。
加齢による変性も素因減額として主張とされることがある
また、「素因減額」による損害賠償金額の減額については、既往症が存在すれば、その既往症がどのようなものでも「素因減額」の対象となるわけではなく、その既往症が疾患といえる程度のものであることが要求されています。
具体的には、脊柱管狭窄症や脊椎の骨棘形成など、加齢による変性によって生じた既往症の場合には、その変性の程度が通常の加齢変性の範囲内のものであれば、「素因減額」の対象にはならないと解されています。
しかしながら、保険会社側からは、このような変性の程度について全く検討されることなく、単に加齢による変性と疑われるというだけで「素因減額」の主張がされることもあります。
素因減額でお困りの方は弁護士にご相談を
このような保険会社による不当と思われる「素因減額」の主張がされた場合、これに対して適切な対応をするためには、交通事故の損害賠償に関わる法律知識はもちろんのこと、一定の程度の医学的知識も求められます。したがって、「素因減額」が問題になる交通事故損害賠償請求のケースについては、被害者の方がご自身だけでは対応することは難しく、弁護士によるアドバイス・助力が必要となることが多いと思います。
保険会社からの「素因減額」の主張に対する対応にお困りの際には、交通事故の問題に精通した弁護士に対応を相談することが有用であると思いますので、そのような問題でお困りの方は、ぜひご相談を頂ければと思います。
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