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無戸籍児問題の増加。非嫡出子の戸籍の取り扱いについて。 ほっかい法律事務所横山 尚幸※横山尚幸弁護士は令和3年6月30日をもって当事務所を退所いたしました。本記事は当事務所在籍中に執筆したものです。法により子どもの父親を決める「嫡出推定規定」
先日,「全国一斉無戸籍ホットライン」という電話相談を担当してきました。
最近,女性だけに課せられる半年間の再婚禁止期間についてニュース等で話題になっておりますが,無戸籍児は,民法772条の嫡出推定規定に関係しております。
同条により,婚姻成立の日から200日経過後に生まれた子の父親は夫,離婚等の日から300日以内に生まれた子の父親は前夫と推定され,出生届が出された場合,父親欄にはその旨記載されます。
嫡出推定が原因で起こる無戸籍児問題
様々な事情により,母親が婚姻中,又は離婚等の日から300日以内に生んだ子であっても夫又は前夫との自然的血縁関係がないことがありますが,出生届を提出した場合,民法772条により,夫又は前夫を父親とする子の戸籍が作成されるということです。
夫又は前夫を父親とする子の戸籍が作成されることが心情的に受け入れがたく出生届を提出できない場合,DV夫(又は前夫)に母親や子の消息等を知るきっかけを与えないために出生届を提出できない場合が,無戸籍児の典型例であります。
無戸籍児にしないためにはどうすればよいか?
母親が主体的にこれを回避するためには,親子関係不存在確認の調停や訴訟,認知の調停や訴訟という裁判所を利用した手続をとる必要があり,嫡出推定規定との関係では,嫡出推定の及ばない子(本来嫡出の推定を受ける子だが,夫又は前夫が服役中など母親が夫又は前夫の子を懐胎することが事実上不可能な場合)であることを説明する必要があります。DNA鑑定にて自然的血縁関係を証明しても嫡出推定規定が適用されることに変わりはない点が,理解しにくい点であると思われます。
嫡出推定を覆した後も残る戸籍の問題
また,非嫡出子は,「出生時の母親の戸籍」に入る(戸籍法18条2項,民法790条2項)とされているところ,夫又は前夫との親子関係が存在しないことが調停・訴訟で認められた場合でも,当然に,母子だけの戸籍ができるわけではありません。この点は,離婚が成立しているか否かとも関係するところです。
無戸籍児問題は,様々な手続や論点が絡む問題であります。対応にお困りの際は,専門家へ相談することをお勧めします。