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自分で遺言を書く時に気をつけなければいけない5つのポイント ほっかい法律事務所阿部 竜司※阿部竜司弁護士は平成28年9月30日をもって当事務所を退所・独立いたしました。今回は,自分自身で遺言を書くときに気をつけなければいけない5つのポイントについてご説明したいと思います。
(ちなみに,専門用語では,自分自身で書いた遺言のことを,「自筆証書遺言」(じひつしょうしょいごん)と呼んでいます。)
※なお,法律用語では「遺言」と書いて「いごん」と読みます。「ゆいごん」と「いごん」の違いについては,「ゆいごん」は,法律上の厳密な条件を満たしているか否かに関わらず,広く故人が遺したメッセージ全般を指すのに対して,「いごん」は,法律上の厳密な要件を満たすものを指す呼び方,というのが一般的な解釈のようです。第1のポイント
全文を自分自身で書かなければならない
【解説】
・パソコン等での作成は不可
⇒遺言は,遺言者本人が自ら全文を書かなければなりません。
署名以外をパソコン等で作成することも認められておりません。
但し,例えば手が不自由な方等について,手ではなく,口や足で書くことは問題ないとされています。
・他人の補助(添え手等)には厳密な条件が必要
⇒他人の添え手による補助を受けた自筆証書遺言については,①遺言者本人が自書能力(自分で文字を書く能力)を有し,
②他人の添え手が,始筆もしくは改行にあたり,もしくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか,または遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており,単に筆記を容易にするための支えを借りただけであり,
③添え手をした他人の意思が介入した形跡のないことが筆跡の上で判定できる場合
のみ,例外的に自書の条件を満たすとされています。
このように,添え手により作成した自筆証書遺言は,厳密な条件を満たさなければ有効と認められないことから,添え手が必要な方の場合,公正証書遺言等,自筆とは別の方法による遺言作成を選択すべきと考えられます第2のポイント
日付を必ず記載しなければならない
【解説】
日付はしっかりと特定する必要がありますので,「平成27年12月吉日」というような,日付の厳密な特定性を欠く表現では言の効力が否定されます。
なお,遺言者の「80歳の誕生日」や,「平成27年12月末日」というような表現であれば,日付自体は特定できるため,有効とされています。第3のポイント
氏名を書かなければならない
【解説】
当然のことですが,誰の遺言かを明確にするため,氏名の自書が必要となります。
なお,例えば著名な作家等について,ペンネーム等の通称を用いた場合も,遺言者が誰であるかが特定できれば,有効とされています。
遺言の用紙が複数枚にわたる場合には,どれか1枚に記載があればよいとされており,必ずしも1枚ごとに氏名を記載する必要はありません。
また,氏名を書く場所についても特に指定はありませんので,文頭,文中,文末いずれであっても構いません。第4のポイント
印鑑を押さなければならない
【解説】
印鑑の種類は,実印に限らず,認印でもよいとされています。
また,拇印ないし指印でもよいとされています。もっとも,真に遺言者が自分の意思で作成したものであることについて,相続人間で疑いが生じないようにるためには,極力実印を用いることが望ましいものと思われます。
なお,遺言が複数枚にまたがる場合には,編綴して(とじて)いただき,とじた遺言書のページ間ごとに契印(ページとページの間を中心として押印すること)しておけば,より本人の作成であることへの疑いがなくなるので,お勧めです(※契印が必須というわけではありません)。
第5のポイント
加除訂正は厳密に!!
【解説】
加除訂正を行う場合には,以下の方式を守らなければなりません①遺言者自身によりなされること
②変更の場所を指示して訂正した旨を付記すること
③付記部分にすること
④変更の場所に押印すること
以上の条件を満たす一般的な訂正方法としては,訂正箇所に二重線を引いてその上に押印し,欄外に,「●行目 削除●字 加入●字」等と記載した上で,その下に氏名を記入するというような方式が考えられますので,参考にしてみてください。
<まとめ>
このように,自らの手で遺言書を作成する場合には,色々と細かい条件を満たす必要があり,1つでも条件を満たさないと,遺言全体の効力が否定され,せっかく故人が遺そうとした意思が反映されないことにもなりかねません。
自筆証書遺言のご作成を検討される場合には,以上のことにご留意ください。
ほっかい法律事務所では,相続・遺産分割,遺言について無料電話・メール相談を実施しておりますので,どうぞお気軽にご相談ください。