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交通事故紛争処理センターのあっせん手続きとは?利用事例をご紹介 ほっかい法律事務所大崎 康二「公益財団法人交通事故紛争処理センター」とは、交通事故被害者の中立・公正かつ迅速なな解決を図るために、自動車事故の損害賠償に関する法律相談、和解あっせん手続及び審査業務を無償で行っている機関です。
東京に本部が置かれており、その他に7つの支部と3つの相談室が全国に設置されています。7つの支部は高等裁判所の所在に設置されており、札幌にも札幌支部があります。
交通事故紛争処理センターが行う事業のうち、実務的に重要なのは「和解あっせん手続」です。
では、この「和解あっせん手続き」とはどのような手続きなのでしょうか?
交通事故紛争処理センターの「和解あっせん手続き」について
交通事故紛争処理センターの「和解あっせん手続」は、裁判所を使わずに保険会社と被害者が損害賠償の問題を話し合いで解決するための手続です。
交通事故紛争処理センターに交通事故の被害者からあっせんの申立があると、事案ごとに相談担当弁護士というものが指定され、まずは被害者との面談相談を行います。
相談の結果、必要と判断した案件については、被害者と加害者側の保険会社等との間のあっせん手続を開始します。
あっせん手続きでは、相談担当弁護士が仲介役となり、被害者と保険会社の双方から事情を聞いた上で、あるべき損害賠償額を提示し、双方がこの提案額による解決を承諾した場合には、あっせん成立となります。
普通の弁護士の仕事というものは、依頼者という一方当事者の利益を実現するための仕事であり、言ってみれば一方当事者の言い分を押し通して行くという面があります。
あっせん担当の仕事は、双方の言い分に耳を傾けて、双方が納得する内容の解決を示すというものであり、弁護士側からしても普段の仕事とはスタンスの異なる仕事といえます。
交通事故紛争処理センターのあっせん手続きを利用するケース
交通事故紛争処理センターのあっせん手続は、加害者側の保険会社に対して損害賠償請求を行う際に有力な手段になります。
加害者側の保険会社との示談交渉で、保険会社が適正な金額の賠償に応じないという場合であっても、あっせん手続を利用し、第三者であるあっせん担当弁護士が間に入ることで、保険会社が態度を軟化させるというケースが多いのです。
保険会社との示談交渉がうまく進まない場合の対応策としては、訴訟を提起するというだけではなく、交通事故紛争処理センターのあっせん手続を申立てるという方法も一つの重要な選択肢になります。
交通事故紛争処理センターのあっせん手続きを利用するメリットは?
交通事故紛争処理センターのあっせん手続を利用した場合、裁判手続と異なり事故日からの遅延損害金や弁護士費用が請求できないというデメリットがあります。
また、一般的には、訴訟手続であれば認められるであろう金額よりも比較的抑制的な金額での解決となることが多いと思います。
しかし、書面のやり取りが中心で、長期間をかけて進んでいく訴訟手続と異なり、あっせん手続は迅速解決を旨としており、あっせん担当の弁護士と口頭で協議しながら進んでいくため、訴訟手続きに比べると圧倒的に早期に解決が得られます。
この早期解決というメリットは、依頼者にとっては重要なことです。損害賠償金が早期のうちに手元に手に入るという点も大事ですが、たとえば訴訟が長期化し、1年以上たっても解決しないという場合には、その間の精神的な負担は大きなものとなります。
この訴訟手続きが裁判が継続していることによる精神的負担というのは、個人差はあるものの、必ずどなたでも感じるものであり、この精神的負担感からの早期解放という点は、あっせん手続きの大きなメリットだと思います。
交通事故紛争処理センターあっせん手続き利用事例のご紹介
当事務所で実際に取り扱った、交通事故紛争処理センターのあっせん手続きを利用した事例をご紹介します。
【事例1】個人事業主の休業損害について250万円の増額を得られた事例
依頼者は住宅のリフォーム工事を受注し、受注した金額に応じて工事の施工会社から報酬をもらうという形の個人事業を行っていました。
事故により数ヶ月入院したため、その間の受注は0件となり、収入が全く無くなったため、休業損害を請求することとなりました。
しかし、事故に遭う前の状況としては、1件の工事が数十万から数百万円であるため月に受注できていた件数は10件以下であり、かつ個人事業を始めて間もなかったため、保険会社からは事故に遭わなければ事故前と同じように工事を受注できたと言えるかどうか分からないという主張がされました。
個人事業主の場合、交通事故に遭わなくても売上や経費、その差額である利益は変動するものであり、売上や利益が下がったり、経費が増えたりしたとしても、それが交通事故によるものかどうかはハッキリしないため、損害が生じても交通事故により発生したものかどうかが争われます。
よって、売上や利益の減少が交通事故によるものだということを立証する必要があるのですが、いくら立証したところで100%そうだと言えない限りは保険会社は売上や利益の減少と交通事故との因果関係を認めようとはしないことが多く、本件でもそうでしたので、交渉での解決は難しいと考え、交通事故紛争処理センターにおけるあっせん手続を利用しました
本件でのあっせん手続においては、依頼者が個人事業を開始して以降の全受注案件についての資料をお預かりし、
・依頼者は順調に受注件数・金額を伸ばしており、事故による入院が無ければ相当の件数の受注が見込めたこと
・国による期間限定の補助金が得られる工事であり、ちょうど需要が多い時期であったのに、入院してしまい、大きな機会損失となったこと
等を資料に基づき、主張しました。
保険会社は、事故によりどの程度受注の減少があったのかは不明であるとして、個人事業としての損害を計算するのではなく、賃金センサスに基づく男性の平均賃金を基準に計算すべきであるとして、約122万円が相当であると主張しました。
本件の場合、依頼者は、男性の平均賃金よりもかなり高額の収入を得ていたため、男性の平均賃金で休業損害を計算されてしまうと損害額がかなり少なくなってしまう状況でした。
しかし、上記のように個人事業において相応の収入を得られたであろうということについて、丹念に主張立証を行った結果、最終的には休業損害について保険会社の主張より250万円多い約372万円とする内容でのあっせん案の提示を受けることができ、無事解決しました。
【事例2】あっせん手続きにより休業損害が約80万円増額した事例
依頼者は会社を経営されている方でしたが特に従業員はおらず、事故による通院のため仕事が十分にできず収入が減ったことから役員報酬(会社が取締役などに払う給与)を減額していました。
従業員は居ないため役員報酬は全て依頼者が働いたことに対する対価であることは争いがない事案でしたが、役員報酬の減額の理由となった会社の売上減少が事故と関係するものかどうかが争われました。
保険会社は役員報酬の減額の理由となった会社の売上減少について事故と関係するものかどうかが不明であるとして当初は一切認めない姿勢でした。
また、入通院慰謝料についても軽度の怪我であることを理由にこちらの主張より約30万円低い金額を提案していました。
この件では、話し合いによる解決は困難であると判断し、交通事故紛争処理センターによる示談あっせんの手続を利用しました。
本件でのあっせん手続きにおいては、
・役員報酬の減額の理由となった会社の売上減少が事故と関係するものであること
・怪我についても診断書の記載を元に軽度の怪我ではない
等を資料に基づき主張しました。
その結果、こちらの主張に対しあっせん担当者は理解を示してくれて保険会社に示談を促してくれたため、交渉段階では100万円以下だったところ約80万円増額した金額で示談が成立しました。
交通事故紛争処理センターを利用検討中の方はご相談ください
今回ご紹介したケースのように会社役員や個人事業主の交通事故による休業損害の算定は、損害が交通事故によるかどうかという判定が難しく、保険会社も請求どおりの額を認めないことが多いです。
このようなケースに、交通事故紛争処理センターのあっせん手続きを利用すると問題解決がスムーズにいくこともあります。
当事務所では、示談交渉や民事訴訟、あっせん手続などの紛争解決のメニューの中から、ケース毎に必要な手段を選択して、より適切な賠償額の獲得を目指しており、必要に応じて交通事故紛争処理センターのあっせん手続の申立も行っております。
交通事故の無料相談も行なっておりますので、交通事故による損害賠償請求でお困りの方はぜひお気軽にご相談ください。